• 流通業の変革で激変する物流施設市場
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流通業の変革で激変する物流施設市場

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目立つ新規供給
2010 年ごろ、大型物流施設開発プレーヤーは10 社程度であったが、現在では倍以上に増えている。また、2019 年の大型倉庫供給面積は約60 万坪、10 年前と比較すると3倍以上となる見込みである。
倉庫供給が増えたにもかかわらず、空室率は数パーセントと高い稼働率を維持している。ご存知の通り、日本人の人口が大きく増えているわけではないのに、なぜ倉庫の新規開発が増えているのだろうか。
理由としては、サプライチェーンにおける物流倉庫内で受け持つ役割が増えたこと、湾岸にあった倉庫が商業施設やマンションなど別の用途に建て替えられ、内陸に荷が移動する動きがあったこと、さらに昨今のe コマースの普及がそれを加速させていること、が挙げられる。

増える倉庫内での作業
昔、倉庫は物を格納することが目的であったが、現在では流通加工や生産工程の一部の役割を受け持つようになった。以下はかつて商品の流れの代表的な例である。
⇒メーカーの工場で製造
⇒メーカーの用意した倉庫、または物流
会社の寄託倉庫に在庫
⇒問屋
⇒商店(値札つけ・梱包・販売)

メイン倉庫の荷が溢れてしまった際には、工場の近くにある小規模倉庫を追加賃借し、在庫波動に対応していた。
現在では、物流業者(3PL=サード・パーティー・ロジスティクス)が在庫・流通業務をメーカーより受託し、物流業者がメーカーに代わり物流施設を賃借、在庫管理から荷札付け、梱包、店舗への出荷、配送までのトータル物流サービスを行うことが増えた。
メーカーとしては、他社の物流も行っている物流専門会社から効率良い物流提案を受けられるうえ、倉庫の確保や荷量の波動を物流業者に任せられるなどメリットも多かった。
さらに、タグや値札付け・梱包等の流通加工業務、商品によっては出荷前の検査やセッティングや、商品撮影も倉庫内で行うことで、倉庫の役割が物を格納するだけではなくなってきた。
そのため、格納スペース以外に、作業等のスペースが必要となり、物流施設の必要面積が増えた。また、倉庫に求められるスペックも変化してきた。照明、天井高、十分な耐荷重、貨物用エレベーターの大きさや荷重、空調設備、効率の良い入出荷業務に必要となる充分なトラック着車バース数、快適な休憩室やレストラン、都心並みのハイスペックオフィス等アメニティの充実を求められるケースも増えてきた。

進む倉庫の大型化
倉庫の規模やスペックがどのように変化してきたか見ていきたい。最近では万坪単位の賃貸倉庫を当たり前のように目にするが、大型賃貸倉庫供給が盛んになったのは、ここ10 年ほどの話で、その歴史はさほど古くない。それ以前の倉庫はどのようなものだったのだろうか。
メーカーの自社倉庫、一部の財閥系倉庫会社、大手物流会社のものを除き、以前の賃貸倉庫は200~300 坪くらいの比較的小型の倉庫が多かった。これは、田畑一反=約300 坪を一つの敷地単位として建築されたためで、農家が農協や不動産会社の提案のもと、先祖代々の田畑を開発し、賃貸倉庫運用を始めたことによる。
港湾エリアや高速道路のジャンクションのある物流立地で、財閥系や港湾事業者などが倉庫を賃貸運用ではなく、1000~3000 坪クラスの倉庫を寄託業務として運用していたが、万坪単位の賃貸倉庫は一部の例外を除き存在しなかった。当時は大型の賃貸倉庫は一般的ではなく、倉庫業者も寄託業務がメインだったことで、万坪単位の倉庫を埋める荷を早期に確保できるイメージがつきづらかったのではないか、と推測する。
日本での大型賃貸倉庫開発は、東京流通センターなどの半官半民に近い特殊な例を除いた純粋な民間企業の例では、外資系物流デベロッパーにより2002 年からスタート、その後、デベロッパーの開発する大型賃貸物流施設が増え、現在に至っている。

e コマース普及が物流施設の利用拡大を後押し
ヨドバシカメラ、ビックカメラ、アマゾン、zozo、楽天、ASUKUL などが自社で在庫・出荷・カタログなどの撮影を行う物流施設を積極的に開設している。ご存知の通り、e コマースでは基本的に実店舗を持たないので、インターネットページと物流サービスがビジネス上で大きなウェイトを占める。例えば家電分野はe コマースが大きく普及した良い例である。経済産業省が発表した電子商取引の市場調査データによると、【生活家電・AV 機器・PC・周辺機器】の2018 年市場規模に対してのe コマース化率は約32%であった。ちなみに、物販系のe コマース化率平均は6.22%であり、他のカテゴリと比較して高い数値といえる。各家電販売店は、自社独自でのe コマース物流網の構築を始めた。大型の物流施設を取得または賃借し、店舗と連動した物流システムを導入。効率良くサービスレベルの高い配送を行っている。
なお、2018 年物販系BtoC のe コマース合計市場規模は9兆2992 億円、2017年から8.12%増加している。このように、e コマースの普及により、倉庫ニーズが増えている。

今後もニーズは衰えず
ところで、日本のe コマースはまだ伸びていくのだろうか。
そこで、他国のe コマース化率と比較してみると、日本のe コマースはまだ伸びる余地が十分あると考えられる。
2010 年から2018 年にかけて、日本のBtoC e コマース化率は右肩上がりで安定継続成長している。また、2017 年の主要国の商取引市場におけるe コマース化率は、日本は7.9%だが、アメリカ11.8%・中国20.4%・韓国18.8%であり、日本のe コマースは成長余地がある。よって、倉庫需要も継続すると考えるのが自然だろう。
一方、倉庫供給能力の観点で見ると、物流不動産は投資家にとって安定したアセットの一つであり、賃借需要がある以上は、今後も安定した供給が続くだろう。
物流施設は過剰供給にも見えるが、求められるスペックの変化や需要増により、今後も積極的に施設開発が行われ、利用されていくと考えられる。

上記の記事は2019年8月28日に 『不動産経済® FAX-LINE』 № 1238に掲載されました。

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